天然コケッコー (2007)

文字数 685文字

【愛しているのは「聖なる過疎の村」】 2008/1/27



王道のシネマ・・・で言いすぎなら、
「良いシネマ」には違いない。

物語の舞台は過疎の地、そこには、
現在でも見つけることのできる日本の四季を切り取った、あまりにも普通の風景。
そんな時の流れが感じられないような普通の生活に立ち起こるさざ波。
東京からの転校生との出逢いから始まる胸奥が酸っぱくなるような恋の芽生え、
その行方を、たった7人の分校というシンプルな人間関係の中でみつめていくドラマツルギー。
計算された時間と空間の制限で描かれるのは、「ずっと昔の日本村」だった。

人は老いてゆく定め、懐かしさに想いを馳せる先は幼年期とその風景なのだろうか。
僕はこのシネマに「この国が経済成長する前」のゆったりした風景を感じ取っていた。
それは主人公そよの言葉、表情に代表される登場人物すべての雰囲気から伝わるものだ。

季節の移り変わり、秋からおよそ1年半、つまり六季に散りばめられたエピソードは
「なんとも無い」。
初チュウ、幽霊伝承、海水浴、西瓜美容法、お祭り、修学旅行、不倫騒動、バレンタインチョコ、進学・・・。
「なんとも無い」ことの繰り返しが青春であったし、成長であった、
そして思い出だったことを今じっと噛みしめている。

その意味からこのシネマは王道を行く。
したたかなのは、
地方格差を受け入れ、主人公さよ(夏帆好演)を選択した恋人(岡田将生、これまた好演)に、
応えるすべを知らない気づかない相変わらず時代ズレした主人公が、
コケッコーと首をかしげていることだった。

彼女が愛しているのは「聖なる過疎の村」そのものだ、
なかなか愉快な結末だった。

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