白鍵と黒鍵の間に (2023)

文字数 781文字

【バブル銀座に咲いた勝手花】 2023/10/11


「素敵なダイナマイトスキャンダル(2018)」系統の富永昌敬実録シネマ・・・? というほど富永フィルムを知っているわけでもないが、「素敵なダイナマイト・・・」では実録シネマに潜む母への愛の裏表を感じ取ったものだ。

実は本シネマを勘違いしていた。
いつものように事前情報は監督と主演俳優くらいのチェックだった。 公開スチルの池松壮亮さんの姿に、単純にジャズピアニスト渋~い物語りだと決めつけた。
池松さんのピアノがたっぷりと聴けると楽しみにしていた。
ところが物語の舞台は1988年銀座、狂乱のバブル時代にあがくピアニスト、それも3年間のタイムスリップが交錯する異色構成だった。 キーワードは「ゴッドファーザーのテーマ曲」。
銀座でこの曲をリクエストできるのは某組の会長だけという設定(もしかして実話?)だ。
このあたりから作風はスラプスティック・コメディに傾く。

コメディラインが不適切というのではなく、ジャズピアノには似合わないと思うだけだが、演技者がコメディにのめり込むと収拾がつかない。
会長(松尾貴志さん)、ムショ帰り(森田剛さん)、バンマス(高橋和也さん)たちのノンストップ突っ込みに抵抗できるはずもなかった。
せっかくのダンディ池松も、結局は破れかぶれに突入してしまった。

いったいバブルの狂乱とピアニストにどんな関係があるのか、基本的な問題に戻る。
反社とバンドマンには懐かしい良い人時代だったのかもしれないが、 バブル時代にどっぷりつかっていた身としては、その無節操ぶりを悪夢と記憶してはいても、かの時代を懐かしむことはできないでいる。 まして銀座の高級クラブなど知ることのなかった多くの働き手には、全く無関心なテーマだった。
コメディとしていくらカリカチュアしても、その真意が伝わってこなかった。
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