64-ロクヨン-後編 (2016)

文字数 690文字

【《希望》という名の綺麗ごと】 2016/6/12



後編、物語が捜査活動に移っていく中での見せ場のピークは
「カモフラージュされた操作指揮車」だ、僕のこだわりだけど。
その指揮車内での主人公三上(佐藤浩市さん)と
一課長松岡(三浦友和さん絶妙の演技)の火花を散らすせめぎ合いが観どころだ。

スクリーンに大きく映し出される、モニター画面の数々、
刻々と入ってくるロクヨン模倣犯からの電話内容、
タイムラグ20分の記者会見、
やはり本作の正念場だった。
繰り返しになるが横山秀夫作品は本来 非刑事部門の悲哀と活躍を掘り起こして
警官の矜持を誇るものだから、
このようなシークエンスは極めて珍しい。
科学捜査機材の粋である電子機器搭載指揮車の中から、身代金搬送を監視する刑事たち、
暴走する父親に取り込まれ、感情を吐露する主人公。
臨場感あふれる映像化に満足した。

ところで、後編で話題になっているのが原作からの離脱、変更だ。
敢えて、その点を事前にリークしているのが興味深かった。
なるほど、この変更は見事に功を奏していた。
原作だと、警察内部抗争に翻弄されてそれでも職務に立ち向かう主人公には
現実の厳しさしか予見できない。
しかし、ここには娘を自分の力で探しださないと、
父親でいられないとする立派過ぎる主人公がいた。
辞職した主人公に深く感謝する被害者の父は15年ぶりに心の安息を得たかのように
自首するという。
そんな折、電話がひっそりと主人公宅で鳴る。

つまるところ、後編では「家族」と「希望」がテーマとなっていた。
そのとおり、シネマで厳しい現実に敢えて直面する必要はない。

こんな綺麗ごとがなければ、現実を生きてはいけない。

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