だれかの木琴 (2016)

文字数 486文字

【心優しき美容師 と 狐付き女】 2016/9/13



いまだに「サード(1978年)」を観たときの衝撃が忘れられないでいる、
40年近くたっているというのに。
久々に東陽一監督に接してみたかった。

本シネマ、一言でいうとアッケラカン。
常盤貴子さんの妖艶さと狂気、池松壮亮さんの直向き、
爽やかの二本立てで全編押し切ってしまっている。
美しけど大人しいカメラワークで描かれるのはその二人にまつわる、
とても日常的なイザコザの数々だった。

美容師(池松)は望むべく最高の資質を備え未来志向も強い頼もしい若者。
彼を追いかけまわすストーカー主婦は常に欲求不満を裡に抱えている。
二人を存在させている美容師の恋人、主婦の旦那、娘はある意味平均的記号でしかなかった。

シネマでは美容師の仕事と接客の技にかなり時間をかけている。
タイトルの意味「だれかの木琴」は結局のところ主婦その人の魂の揺らぎだったのだろう。

作品中、昔の村集落だったら「狐付き女」は共同体の中で吸収していたが
現代ではそんなことはできない…と注釈がある。

世間の中で生きていくことの困難さ、
この切なさはやはり東さんの生涯のテーマだと解釈した。

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