すべてが変わった日 (2020)

文字数 698文字

【静謐とヴァイオレンスを包み込む大地】2021/8/12



ケビン・コスナーとダイアン・レインが老夫婦(!)を演じる、見逃せるわけもない。
今シネマの夫婦役はスーパーマンの両親とは違って、ほぼ独占的主役でお二人のキャリアが浮かび上がるような俳優人生がいっぱい詰まったものだった。

物語りの大筋はシンプル、事故死した一人息子の嫁が孫を連れて再婚した先に、二人を奪還に赴くという、僕には特別なテーマでもないような思い込みがあった。

時代は1960年代らしい、夫婦が住むモンタナ州から隣のノースダコタ州まで移動するクルマからの風景は、いつも空の部分が大きくて広陵と冷気を僕は肌に感じる、そしてそこに住む人間の心の中を想像する。
大きな目的の旅だから、ロードムーヴィーの趣はないと思っていた僕は肩透かしを食らう。
野宿地で出会った先住民青年と夫婦の交流は物語のキーにもなるが、ケビンの出世作「ダンス・ウィズ・ウルブズ」の想い出をなぞる。

一人息子の事故死、愛馬の安楽死がモンタージュされ、シネマは後半から一気に陰鬱なトーンに変調していく。
アメリカ北西部のあくまでも広大で静謐なロングショット、屋内での近接した暴力シーン、夫婦の強固な想いが孫を救い出せるのか?
一気に緊張したラストシークエンスは過去に葬り去れれてしまった《アメリカン・ニューシネマ》の興奮を呼び戻してくれる。

いやいや、アメリカはちっとも変ってなどいない、ニューシネマが告発した体制の硬直は今現在も変わらないままだ、
今シネマが告発したかったテーマだった。

豪華な夫婦キャストだが、結局ダイアン・レインの強情が勝利した、そして本シネマはダイアンの代表作になった。
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