ザ・ファブル (2019)

文字数 839文字

【変顔 x 変顔 = イケメン】 2019/6/21



(おふざけ) x (おふざけ)=生真面目と言い換えてもいい。

天下の二枚目俳優、岡田准一さんと柳楽優弥さんがこのシネマではとっても変なのである。
お二人の役はレジェンド殺し屋ファブルとワルのヤクザ。
作品本体もコミック生まれの荒唐無稽ではあるが、それに輪をかけたようなお二人の変顔・おふざけ演技にしばし感嘆してしまった。
彼らが変顔をを見せ合うたびに、オーバーアクションに突き進むたびに、不思議なハーモニーが生まれてくる。
僕は変顔の向こうに日本を代表するイケメンを思い出し、おふざけアクションの裏に計算された演技構成を読み取っていた。
つまるところ、本シネマは、岡田さん・柳楽さんの一挙手一投足を愉しむべきだと納得することにした。
ゴージャス共演人、佐藤浩市さん安田顕さん、そのほかの方々が身をわきまえた役作りなのも、彼らとの異質感を増幅するためだった。

ところで、
シネマのテーマは「殺し屋」対「非殺し」・・・殺し屋なのに殺してはいけないというジレンマ、よくある設定ではある。
見せ場(?)の殺しを封印した殺し屋の活躍は、しかし期待するほどでもなかった。
冒頭でジョン・ウイッチ様式の接近射撃をご披露しているので、その繰り返しができない制約があったとしても、新鮮なアイデアが欲しいところだった。
斬っても斬っても悪漢がが次から次と現れてくる邦画の古きばかばかしい思い出がよみがえってきたものだ。

実はこの人質救出アクションは本シネマのハイライトではない。
殺し屋とヤクザ二人に君臨する父権の在り方が伏流として語られる。
殺し屋もヤクザも、同じように父親的権力に守られ、その権力に従順に従う姿が何故か悲しかった。
そこには個人の自由・尊厳の欠片もない、いくら裏街道の人間とは言えそれは哀しかった。

老婆心:
てっきり、柳楽さんは二人主役待遇かと思っていたら、クレジットロールでは下の方だった。
近頃演技者として飛躍中の柳楽さんに対する仕打ちに少し気の毒になった。
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