劔岳 点の記 (2008)

文字数 882文字

【あぁ 健さん】 2009/6/21



新田次郎さんに捧げるエンドロールの言葉が印象的でした。
自然の美しさ厳しさ、挑む人間の小ささと強さ。
すべて新田さんの思いがこめられた素敵な作品になっていました。
が、しかし
スイマセン、新田次郎ファン、山岳ファンの方々にはまことに申し訳ないのですが、
僕は木村大作撮影といえば「健さん」しか思いつかない勝手な男です。
鑑賞する前から、大作さんが仕切るのになぜ「健さん」が観れないのかと、
理不尽をいっぱいポケットに忍ばせたままスクリーンに挑戦していました。

「八甲田山」、「駅ステーション」、「海峡」、「居酒屋兆治」、「夜叉」、
「あうん」、「鉄道員(ぽっぽや)」、「ホタル」「単騎、千里を走る」での、
木村大作が撮る「健さん」のクローズアップが僕は好きでした。

今回は俳優は観まいと決めてました。
今回は前評判の高い、嘘ごまかしのない自然を大画面で堪能できればいいか
・・とも決めてました。

でもドラマが始まってすぐ、僕は奇妙な違和感に囚われていました。
「健さん」がいる、確かにいる気配がするのです。

浅野忠信さんのことはよく知らないのですが(ファンの方ごめんなさい)
記憶していた以上に役者魂を燃やしていたように感じられました。
そう、浅野さんの無口な控えめな役作りに僕は「健さん」を観ていたのだと思います。
もしかして、いや間違いなく木村監督は、
その意図を持って浅野さんのクローズアップを撮っていました。

単純に想定しても、本シネマのテーマの一部は
「八甲田山」はじめとする上記作品のそれに通じるものがあります。
職業に殉じる心根を持った男たちとその家族、
「八甲田山」の将兵達、
「駅ステーション」の警察官、
「海峡」の技師、
「居酒屋兆治」の飲み屋の主人、
「夜叉」の漁師・・・。

そんな想いで観る劔岳は壮大で美しく、
挑戦する役者達の意気込みは明治の男女たちのそれにシンクロし、
フィクションとシネマの境を見失いそうになるほどでした。

出来うるならば、「健さん」に会いたかったのですが、
おそらく「健さん」ならこう言ったことでしょう。
・・・後輩の皆さんで頑張ってください・・・

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