ちょっと今から仕事やめてくる (2017)

文字数 855文字

【世界に羽ばたけ、優しさと純粋さをもって】 2017/5/27



過酷な就職活動でやっと正社員になっても、たちの悪い職場だったらどうしますか?
そこには労働基準法などどの国のこと? と疑うような内部規律、長時間残業(むろん無給)、言葉や肉体的暴力、それを嬉々として実行するだけの上司、
本作では、そんな日本の労働環境実態を執拗に描き告発する。

若者の離職率の高さ、精神的障害の増加、
哀しいことに自殺にまで至る現実を後追いするかのような物語だった。

主人公が自殺する瞬間、その命を助けてくれたもう一人の若者 山本、
彼との交流で主人公は働く楽しさすら覚えるようになるが、
命の恩人は3年前に自殺していた・・・
・・・というところまでは、かなりの長期間予告編が流れたおかげで、
僕の頭の中にしっかりと刷り込まれていた。
キーワードは  「山本 お前はいったい何者?」

その意味では、かなり濃厚なプロローグで洗脳されたのだろう、
山本は幽霊なのか? 本作はスリラーなのか?
という局面に立ってしまった。

しかし、主人公はこの後も些細なミスからより一層悪辣なパワハラにさらされる。
彼が犯した発注ミスなんてものは、営業職なら必ず経験するものだが、
孤軍奮闘の環境では追い込まれてしまうのがよくわかる。
僕も些細な発注ミスからのトラブルで、社会人生活中 唯一「死」を考えたことがあるから。

誰もが考えるアドバイスは 《そんな会社辞めた方がいい》だろう、
その結論に至るストーリーは通俗であると同時に貴重な価値観を思い出させてくれる。
自分を大切に思ってくれる人のために生きる。
シネマの大部分を使っての「ミスマッチ就職の修正」は、
会社で働くすべての人の指針になるだろう、
それだけでも本作の意味はある。

シネマはラストスパートで駆け足のように、
山本の正体と主人公の未来を垣間見せてくれる。

このサスペンス謎解きパートこそ、これから就活する若者へのより重要なアドバイスだった。
ガラパゴスフレッシュマンになることなかれ、
世界は広い、優しさと純粋さを大切にしなさい・・・・と。

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