ALWAYS 三丁目の夕日’64 (2011)

文字数 827文字

【宅間医師、シリーズを救う】 2012/1/21



三作目にして一皮剥けた、いい出来具合だった。
シリーズを特徴づける「なりふり構わない感情操作」は今作でも健在であったにもかかわらずだ。
このシリーズ、僕のアイデンティティを確認する反面教師として過去2作に相対してきたにもかかわらずだ。
日本アカデミー賞批判のためにも見落とすわけにはいかないという【負】の動機だったにもかかわらずだ。

ひとえに、宅間医師(三浦友和)の発したワンフレーズで僕の気持ちがすっきりした。
というのには、心の奥底で本シリーズのコンセプトに根本的な疑問をもっていたからだ。
シリーズが標榜している「古き良き時代、昭和」、「貧しくとも豊かな心の庶民」がまったく気に食わなかった。
僕が記憶している昭和30年代から40年代は「競争の時代」だった。
もっと下世話に表現すると「貧乏脱却ゲーム」満載の世の中だった。
不便で、不効率で、退屈な生き方の先に「明るい灯」が見えてきてはいたけども。

貧乏を素材とした過去の2作を反省するが如くの医師の言葉:
『金持ちになりたいとか、出世をしたいとかではなく人が安心できることが「うれしい」と思う人間がいる。これはいまどき珍しいことだ・・・・・・。』
昨今の慢性的不景気、格差拡大を意識した観客への迎合的セリフだったのかもしれないが、
実は「ALWAYS 三丁目・・・」の頃は決して人情溢れかえっていた日々ではなかったことを明らかにした。

この前提があってこそ、鈴木オートも茶川もその生き様がくっきりと浮かび上がってくる。
この宅間医師のシーンまでは、惰性の笑い、時代的オチでそこそこ満足していたが、
このシーン後の展開に僕はドップリト浸かってしまった。
よくある「見かけ良い奴=ワル」のひねりにもドンピシャで嵌まってしまう。
本物の涙、笑いに浸ってしまった。

老婆心:
相変わらずの名(臭)演技の二人(堤さん、吉岡さん)に加えて森山さんも加わる。
これは長寿シリーズになりそうだ、思いがけず。
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