ラーゲリより愛を込めて (2022)

文字数 885文字

【戦争って本当に酷いものだ】 2022/12/13


二宮和也さんの献身無くして本シネマの成功はなかった。
以前より彼の滑らかなせりふ回しを驚きをもって拝見していたが、本作ではそこを敢えて捨て去り、その向こうにある名優の域に入っていく彼の姿が眩しかった。
そんな二宮さんを支えている錚々たる助演人、松坂、桐谷、安田の体当たり演技はもう一つの観ものだろう。

テーマは 「戦争はひどいもの」、主人公の言葉である。
12月8日、太平洋戦争開戦の今頃になると戦争巨編と称する、一見戦争を批判しながらもかっての帝国軍の勇壮な姿をスクリーンに 再現するのが例年の企画だった。
はてはて、今年のこの変化はウクライナ戦争の影響なのか、はたまたその先の大戦を意識したものなのか。

「戦争して何もいいことはない」という単純な真実が忘れられてしまいそう、または意図的に隠されようとしている現実への鋭い一撃のシネマが本作だった。
モチーフは戦後十数年もの間ソ連に強制労働させられた日本人兵士たちの素顔。
多かれ少なかれ、満州で生活した日本人を含めて戦争に負けることのリスクは国民全員が負わされるものである。
クライマックスの遺書伝達シークエンスは映像ならではの盛り上がりと昇華を感じることができ思いのほかの満足だった。

しかし、僕が一番印象深かったのは、2022年日本と1945年哈爾浜での二つの結婚式が重なり合うエピローグシーンだった。
10歳で満州での敗戦を生き延びた幼かった主人公の長男が80歳を越えた今になっても思い出す平和の一時、 彼は決して戦争の悲惨さを訴えない、今この瞬間の良き時間を覚えておきなさいとだけ伝える。
戦争はひどいものだ、二度と繰り返してはいけないと世界のみんなが言いながら・・・戦争は決してなくならない、残念なことに。
ではせめて幸せな日々時間を確りと記憶に留めて置くしか庶民にできることはない。

老婆心:
僕の祖父も敗戦時満州黒河にてソ連の襲撃を受けたと聞くがその詳細は一切口にしなかった。
戦争は個人の力では制御できない魔物なのだろう、そしてそれは決して滅ぶこともない。
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