ノートルダム 炎の大聖堂  (2021)

文字数 721文字

【国家威信を掲げた奇跡物語】 2023/6/9


2019年のノートルダム聖堂火災を再現したシネマ、2021年製作 という異例の速さは本シネマがフランスの威信をかけた再建プロジェクトの重責を担っているからなのだろうと想像できる。

シネマ自体は時系列にドキュメンタリータッチで進行する。
各国からの観光客で賑わう聖堂、修復作業に携わる作業員の無規律な様子、そこに聖堂火災の原因とみられる煙草ポイ捨てが暗示されるが、本シネマのテーマは火事の原因究明ではない。
マクロン大統領が言い放った2024年再建計画への宣言が本シネマの根底に横たわる。

つまるところ、本シネマは政治臭芬々なのであるが出来上がったシネマは、そんな国家の思惑を超えたエンターテイメント作品に仕上がっている。 国家威信高揚を逆手に取ったジャン・ジャック・アノー監督とスタッフのシネマ愛をひしひしと感じてしまった。

シネマは三本の強力な権威をそれぞれ個別に賞賛する構成、その間隙をぬってシネマの神髄を見せてくれる。
その権力とは、「教会」、「国家」、そして「消防隊」。
事件現場である教会の権威をシネマは決して毀損しない、火災鎮火を祈る市民の姿。
聖堂よりも消防隊員の命を重視したマクロン大統領。
大統領の決定に逆らってまで鎮火決死隊を派遣する消防隊。
三者すべてをリスペクトする凡庸な展開かと思わせておいて、最後に奇跡を見せてくれる、シネマらしい奇跡を。

フィクションが含まれるものとは思うものの、「シカゴファイア」を上回る臨場感あふれる消火アクションは、再現ドキュメンタリーとしても一見の価値ありだった。
パリオリンピックに間に合ってノートルダム聖堂が再建されることを心から願っている。
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