ウエスト・サイド・ストーリー (2021)

文字数 652文字

【いつかどこかで幸せに、きっと】 2022/2/28



古典名作シネマなのに、初めてのリメイクとは意外だった。
やはり舞台名作のシネマ化は需要がないのかもしれない。
60年の年月を経てのリメイクはそれではどう変わっていたのか、あるいは変っていなかったのか?

前作が日本公開の時、僕は小学生だったはずだから、両親に連れられて観たに違いない、そして不満足な想いで家路についたことしか覚えていない。
あれから、ミュージカルというジャンルが苦手になった。
今般、古希を過ぎてリメイク本作に接し、実は思いのほか幸せになっている。
いや、誤解を招く「幸せ」などと表現してはいけない、60年前に本作が理解できるはずもなかった幼い自分を微笑ましく思いやることができて安心している。
シェイクスピアの悲劇と移民の苦悩がミックスされた物語は、いくら名曲が歌われ、華麗なダンスが繰り広げられてもハッピーにはなれない。
哀しいことにいまだに移民問題のとば口にすら立っていない日本に住む僕には、物語の若者たちの鬱積を理解できるなどと嘘もつけない。
しかしながら移民、人種というキーワードは60年前と何も変わることなく現在も目の前になり、これからもあり続けることだろう。
もう一つのキーワード貧富格差に至っては60年間いっそう拡大されたとしか思えない。

そんな混沌と愛憎の現代においても、人は毎日生きていかなければいけない。
本シネマはそんな救いようのない矛盾を唄とダンスで美しく昇華させてくれる。
いつかどこかできっと幸せになれる・・・そう信じて生きるために。
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