魍魎の匣 (2007)

文字数 676文字

【「ときめき」と「おののき」】 2008/7/6



「あぁ、なんと おどろおどろしい!」
という言葉をイメージとして映像化するには相当の知的豪胆力が必要だ。
例え、キーワードとして、
「マッド・サイエンティスト、人体実験、猟奇事件、戦闘後遺症、陰陽道、超能力・・・」などの言葉が、闇のなか妖しく輝いているとしてもだ。

この日本独特の「胡散乱調美」は僕の年代には一種ノスタルジックな趣がある。
小さき頃、隠れ密やかに手に触れたこの類の「ときめき」と、その後の反作用も含んだ「おののき」に夜中ひとりで震えたことを懐かしくも思い出す。

本シネマが目指した変質的でそのくせ純粋なリビドー、この難問は確りと予想以上に衝動していた。それを支えていたのは、あまたの癖あり俳優たち。
個性派あり、難解派あり、話題派ありの大盛りサービス。
グロテスクな内容だからこそ、美男、美女が多数顔見世して血の匂いを中和させてくれる。
堤、阿部、椎名そして黒木、田中のメンバーは適切に散りばめられ適性反応していた。
音楽も然り、監督の見識に納得する。

しかしながらである、ストーリーそのものはステレオタイプ。
「おどろおどろしさ」にフレッシュ感覚もあるまいが、オーソドックスな展開は、換言されて「凡庸」の謗りを免れない恐れさえ含有する。
アクションパートで地味さが目立ったり、冗長な謎解き説明が耐え難かったのは、
対極でのスタイリッシュ妖気がパーフェクトの領域に達していたからであり、
このアンバランスは後々尾を引く齟齬となった。

実は実は、そんな瑕疵すら本シネマの異常さの前には取るに足らない、
この妖しさは捨て難い。
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