沈黙の艦隊 (2023)

文字数 840文字

【名優は目で演じる】 2023/9/29


コミックは不得意分野だが、原作名くらいは知っていた。
このようにシネマの大スクリーンでの初対面を幸いだと期待する一方で、予告編情報でうっすらとそのコンテンツが想像できたのも事実だ。
いわゆる、予告編シネマでなければいいのだがという懸念もあったが、ここは大沢たかおさんを見るだけでも一興と思いシネコンに馳せ参じる。

潜水艦を舞台とするシネマには多くの名作が歴史に残されている。 そのベースにあるのは密閉された潜水艦の中にいる兵士たちの恐怖と克己心であり、そこに各種の彩が施されてきた。
今作は「政治」が大きなテーマだった。
親米従属国家として不均衡な安全保障体制を、いかに一歩前に進めるかという政治が本シネマの主役だった。
コミック恐るべし。

原作ファンにしてみれば、何をいまさらということだろうと思うが、今ロシア、中国、北朝鮮との紛争危機が現実化しているなか、 本作のテーマはエンターテイメントでお茶を濁すレベルではなくなっている。 本シネマに防衛省、自衛隊が協力しているのも、初めて潜水艦内部が撮影できたという自慢話も、そう考えると頷くこと数回。

今作を理解した所では、米軍超最新鋭原子力潜水艦を日本人クルーに運用させるというセコイ方法で核兵器を保有するという 保守「政治」に対し、
大沢たかお演じる海江田艦長は米第七艦隊から脱し潜水艦を独立国大和とする「政治」に打って出る。
その真意は大和は日本と軍事同盟を結ぶという「政治」になるようだ・・・・今作はここまで。
間違いなくエピソード2が続くはずだ。

荒唐無稽、デタラメと言ってしまえばそれまでだが、だからこそこの話の続きを観てみたいものだ。
それと反対に、全く機能しない内閣の右往左往にリアリティを感じた、特に派閥や陰の実力者たちに小突きまわされる首相(笹野高史さん好演)はその極みだった。

楽しみにしていた大沢さん、毅然と命令を発する艦長、狭い艦内で動きのない演技、名優は目で演じていた。
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