クーリエ:最高機密の運び屋 (2020)  

文字数 711文字

【英国特産品、スパイ】 2021/9/24



予告編情報によると、キューバ危機の諜報物語だという、やけに古臭い話だ、
僕は小学6年だったので原爆の恐怖に怯えた記憶はないが、大人たちは第三次世界大戦を覚悟したらしい、それも60年前の遠い昔々。
民間人の英雄譚ということも察したものの、「ブリッジ・オブ・スパイ(2015)」で堪能した欧米の個人の名誉と責任の二番煎じにならないかと懸念もしていた。
俳優カンバーバッチであれば、一味も二味も違った素人スパイの悲哀を出してくれるのだろう・・・くらいの前向きの予想も当然あった。

いつものように前段が長くなって恐縮だ、結論から言うと本シネマは予想を覆すアン・ハッピーエンディングだったが、予想通りカンバーバッチの熱演に引きずり込まれてしまう、
思いがけず名作に出会った。

先に引用したスピルバーグの「ブリッジ・オブ・スパイ」がアメリカ市民の視点からの英雄を描いていたのに対して、本作は民間人の個人的想いからの英雄行為を描く、さすがにジョン・ル・カレを輩出した英国伝統芸を目の当たりにした。
主人公セールスマンが相手をすることになったソ連情報源、MI16、CIAの人間とのシークエンスがひとつひとつ人間臭い、見事だった。
さりげなく垣間見せる、主人公の妻と息子、ソ連軍大佐の妻と娘、肌理細やかな映像サービス、ドミニク・クック監督の術中にどんどん嵌まる。

本シネマも近年多用されている「実際に出来事に基づいた」ものとのことで、エンディングロールで、実際の主人公の映像が流れる。
カンバーバッチにとっては当たり前かもしれないが、
モデル本人とカンバーバッチがピタッと重なり合った、
その姿かたちのみならず佇まいまで。
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