15時17分、パリ行き (2018)

文字数 1,028文字

【クリントからのとてつもない名誉勲章】 2018/3/2



とてつもなくつまらないシネマだった、僕には。
常に観客の席から見たシネマ製作を心掛けているクリントなのに、僕には退屈だった。
もしかして、僕には今作の観客の資格はなかったのかも・・・と気付いた。

物語は休暇中のアメリカ軍兵士がアムステルダム発パリ行きの列車内で
テロリストを拘束するというアッパレ噺。
新聞、TV などでその勇敢な若者たちのニュースは知っていた。
その実話を再現するクリントは想像の枠内だった、共和党愛国者の面目躍如だ。

でも、その若者をそのままキャスティングして
再現するのはとてつもなくリスキーだと思った。

そんな心配で胸を痛めながらスクリーンに向かった、
僕は筋金入りのクリント主義者だから。
僕の危惧は予想以上に当たっていた。
小学生時代の回想シーンに戻るとホッとするくらい、
素人のAS HE ISの芝居は見ていられなかった。
加えてのバカンス旅行シークエンスの日常的経過は
質の良くない画像とともに僕の我慢を切れさせる。

タイトルであり、事件である列車内のアクションは実話に基づいただけあって、
本人たちだけあって臨場感はマックスだが、
このシーンに至るための長い長い道のりは
クリントシネマでは考えられない愚かしい経過だった。

僕は、もう一度クリントの真情を忖度する。
クリントはそんなことはみんな解かっていて本シネマを製作した。
ワーナー配給だけど、マルパソカンパニーでクリントの製作・監督という
オーナー社長の道楽作品だ。

もっともオーナーといえども中小企業だけに赤字になる仕事は請け負うわけもない。
しかしである、
ソフト・ターゲットへのテロを防ぐのは
その現場にいるターゲットそのもが勇気を出すしかない。
今作の場合でも、《いけ、スペンサー》の気構えがなければ、
列車内の犠牲者は多数だったろう。
今そこにある脅威に抵抗した3人の若者本人へのご褒美が必要だと、クリントは思った。

いくら少年時代の反抗心、訓練時代の献身を掘り下げてみても、
素材としてはつまらない。
つまらなくてもいいとクリントは確信している。
これは彼らへの勲章なのだから、
クリントが渡すことのできるできる最高のご褒美なのだから。

老婆心:
主人公スペンサーは少年時代から戦争に夢中だった、「戦争になかで人を助ける」ことに。
彼の子供部屋には戦争シネマのポスターが貼っていた。
キューブリックとクリントの作品だった、
押さえるところはちゃんとお押さえていたクリントだった。
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