春に散る (2023)

文字数 729文字

【爺様タッグの判定勝ち】 2023/8/25


「君の瞳が問いかけている(2020)」での横浜流星さんのボクサー役が印象深かった、ぼくが彼の俳優資質に興味をひかれたシネマであり、その後まめにフォローして今作に至った、またまたボクシング物語だという。
例によって予告編情報だけを入れていた、元ボクサーが若者を教えるという、手垢に塗れた荒筋だと理解したがそれ以上に横浜さんのボクサーを今一度観たいという想いが強かった、ここまで役者幅を大きく広げてきた横浜さんのぼくにとっての原体験ボクサーを再度演じるのを見逃すわけにはいかなかった。

世界チャンピオンを争う試合がクライマックスにあるのも、一度挫折した若者が元ボクサーの老人に教えを乞うのも、老人が大病を隠すのも、若者が眼を壊すのも、チャンピオンが傲慢なのも・・・すべてはありきたり、目新しいものは一切なかった。
肝心の世界戦の内容が、会場の盛り上がりが薄っぺらかったのはロッキーシリーズでボクシングに親しんできたボクシング門外漢のシネマファンには物足りない後味になった。

しかしながら、
ボクシングを軸にした師弟愛が本シネマの縦糸とするならば、老いた元ボクサーたち(佐藤浩市、片岡鶴太郎、哀川翔)の人生終章の悲哀が横糸になり、上記陳腐なボクシングストーリーを陳腐なまま崩壊させることはなかった。
頭脳ボクシングを否定し、血みどろになり倒れるまで戦うボクサー、一生に一度の忘れられない体験だけで人は生きていけるのか?
古希過ぎのシネマファンが受け取るにはあまりに大きな問いかけだった、佐藤さんたちのよう人生を全うできるのか?・・・と。
単純なボクシングシネマでも横浜さんのシネマでもなかった、爺様タッグの判定勝ちだった。
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