パッセンジャーズ (2008)

文字数 760文字

【一瞬の恋、永遠の愛】 2009/9/27



ご注意 
《ネタ》そのものが本シネマの存在でもあるため、
これから鑑賞予定の方はその旨お覚悟召されよ

「死」の世界を描いたシネマは多い、「死後」の世界も然り。
時たまその中間である「さ迷える魂」をテーマにしたものも多い。
その根底にある思想は
「人は自らの死に納得してはじめて彼岸に旅たつ」ということなのか?

なんと人類は折り目ただし生命体なのか・・・という皮肉は止そう。
僕には死後の世界はわからない、
できることは無念の死を受け入れざるを得なかった人の鎮魂ぐらい。

本シネマを観終わってまず思い至ったのは、残された家族の哀しみだった。
旅客機墜落事故の中で、成仏できない数名の魂の物語。
実はラストシーンまでストーリーはすべて死者の幻想、
それも「死」を拒絶する主人公の想いが描く世界。
その意味では叙述的トリックがあるわけでもなく、終始は一貫している。
当然のことだが、シネマ進行に従って
主人公の世界があちこち崩壊してくるサスペンスは一つの見所。
その結末は喧伝されるような「驚愕」には程遠い、予測できるものだが、
これはこれで僕には充分なカタルシスだ。

ところが、
観終わって初めて主人公の短時間の恋に気付く、これは切ない。
主人公(アン・ハサウェイ)と素敵な男性(パトリック・ウィルソン)のあまりにも短い恋。
反芻すればするほど二人が「死」を認めなかった理由がわかる。

誰だって突然の「死」を、あっさりと受け入れられるものではない。
墜落の恐怖を再現した迫真の撮影も特筆すべき点だが、恐怖のなかで「死」と対峙する壮絶。
その数十秒の間に確信する愛情の深さに、再度哀切に眩れた。

老婆心:
どうしても、あの御巣鷹山を思い出してしまった。
またシネマ「沈まぬ太陽」でこのテーマに近々向き合う。
返す返すも残酷なものだ、墜落とは。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み