マチネの終わりに (2019)

文字数 742文字

【繊細骨太なスケルトンに肉付けされた名作】 2019/11/2



平野啓一郎原作はあまりにも古典的戀愛小説であり、
そうでいて現代ラブストーリーに根付きながら、畏敬を禁じ得ない未来哲学物語でした。
《未来は過去を変えていく》 
なんとも宇宙的であり人間的ではないでしょうか。

テーマが壮大であるだけに、文字では言い尽くせない苛立ちや誤解があった小説に
血と肉を附与した本シネマ、予想以上の名作です。

とはいえ、物語そのものは単純すぎるほどの典型的「すれ違い」と
「悪意のない愛」に支配されています。
アラフォー男女の運命を結びつけるのも引き離すのも、
最先端ITツールという皮肉、
同じように二人を引き離し、結び付けるのも、
根源的な人間のエゴだという二重の皮肉。

シネマ化になったという知らせを聞いたとき、
その二番目の皮肉「マネージャ」のキャスティングに注目しました。
その桜井ユキさん、見事に大役を果たしていました。
福山雅治さん、石田ゆり子さんご両人の不思議な恋物語から
現実世界への帰還を成功させてくれました。

福山さん、冒頭からラストシーン直前までスランプに落ち込むギターリストを、
敢えてむくんだお顔で演じ、
最後の最後に爽やかな笑顔とキレのある表情を見せてくれました、
僕にはそう見えました。
石田さん、福山さんとの多数のズームアップショットに果敢に挑戦してくれました、
お二人の慟哭シーンは長く僕の記憶に残るでしょう。

長崎の高台の家の庭にある石のテーブル、
ニューヨークの歩道にある石のスツール、
「未来は過去を変えられる」ことを象徴する素晴らしいカットでした。

ラストシークエンスは文字では表現できない感動でした、
お互いが噴水を挟んで・・・さてどちらに廻るか。

ここまで肉付けされれば、平野さんも満足に違いないでしょう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み