追想 (2018) 

文字数 592文字

【人生に悔いなし、涙があるだけ】  2018/8/16



「ブルックリン(2015年)」 以来シアーシャ・ローナンをフォローしている。
今作がイアン・マキューアン原作と知ったのは、だからシアーシャのおかげだった。
マキューアン・ファンなのに原作は読んでいなかったので、忸怩たる思いでシネマを拝見した。

結果として両方に満足したのだった、シアーシャにもマキューアンにも。
物語は人生のなかの大切な一瞬をすれ違う若い男女が
1962年当時のモラルと階級社会の中で描かれる。
原作の重みがシネマを支配していた一方、堅物の清純女性をシアーシャが熱演していた。

「あの時・・・すれば」
という思いは僕のように古希を前にした人間には、ひとつやふたつはある。
しかし長く生きてしまうと、それはもうどうでもいいことになる。
立ち戻ってやり直すことはできないことでもあるし。

近年この手のシネマが気になるのは、
そういってもやはりお年頃のせいなのかもしれない。
「ラ・ラ・ランド」、「カフェ・ソサエティ」に見える男女の恋の顛末がやけに切ない。
本シネマでの男女のすれ違いは、より痛切で破滅的だった。
俯瞰で判断すれば、主人公二人は所詮似合わない者同士だった。
音楽家を全うした娘、歴史家に成れなかった青年、
人生総集は残酷なものだ。

しかし、人の幸せはいったい何なんだろう?
後悔することのない人生は美しい、
そこにちょっぴり涙があふれていても。

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