まほろ駅前多田便利軒 (2011)

文字数 838文字

【セ・ラ・ヴィの似合う街?】 2011/12/4



三浦しおんさんの直木賞作品なんだけど、この原作はかなりの難物だよね。
敢えて総括すれば《栄光のない英雄ストーリー》、
華も艶もない底辺に生きる青年の生き様なんだろうな。
短編連作形式は映像化に易しそうだし、肝心なカタルシスがない、淡々としているわけさ。

このシネマはこの地味な直木賞作品のエッセンスをそのまま受け継いでいる。
三浦ファンとしてはうれしいわけだけど、そうでない観客には「??」になるかも
・・・いやなるに決まっている。

主人公二人に瑛太、松田龍平を配したので、
なおさら「????」になった彼等ご贔屓筋がいたことだろう。
その方たちにはご愁傷様としか言いようがないが、このキャスティングは絶妙だった。
意地悪くいうと、この二人のおかげで本シネマは何とか120分あまりを維持していた。

原作シネマに接するたびに胸騒ぐのは、
自分の想像力(創造力)とシネマ作家とのそれとの隔たりの幅がいかほどか?ということだ。
プロに対して不遜とはいえ、シネマファンの愉しみ方のひとつだよね。
その結果はというと、風景、背景はそのまんま町田だから、違和感はなかった
・・・いやあるはずがないさ。
便利屋に絡まってくる雑多な人間は、しかし残念なことにパワー不足だったな、
彼らの生活感が男二人の挫折を際立たせてくれるのにね。
まぁ欲を言っても仕方がないし、
主役二人の熟練度は僕の想像を十分に刺激し楽しませてくれた。
心に深い傷を負った二人の男がひっそりと町の片隅で生き続けていく
・・・それがテーマなんだね。

海辺に打ち上げられた数々の貝殻のようにエピソードが全編にばら撒かれるけど、
その断片が盛り上がってクライマックスにつながることもない。
逆になるべく無意味にそのエピソードは終息し、そのまま捨て置かれる。
観客としては裏切られた気持ちもあろうけど、実際の人生はそんなものだっけ
・・・と思えればしめたものだ。

とはいえ、「セ・ラ・ヴィ・・・」の粋な言葉が似合わない町田だったけど。

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