まく子 (2018) 

文字数 715文字

【子どもたちが素晴らしい】  2019/3/18



西加奈子さんの小説は「漁港の肉子ちゃん」しか読んでいない初心者メリットもあって、
本シネマにはちょっぴり期待して拝見した
・・・西ワールドの片鱗でも覗けるものかって。

偶然だとは思うけど、
本シネマには「漁港の肉子ちゃん」主役の母娘コンビ「キクりん・肉子ちゃん」に
似た母娘が登場する、それも二組。
それは、「コズエ・オカアサン」と「ソラ・母」の二組、
彼らが本シネマを盛り上げ、そして引き締めていた。

主人公は山奥の温泉旅館の男の子(11歳)、
大人になることの不安を感じるお年頃を山崎光さんが品格をもって演じている。
どこにでもある田舎の小学校、そこに来た転校生が子供たちのなかに波紋を起こす
・・・・よくある流れだと思ったら、少し変だった。
この母娘が変だった。
転校生(11歳)を演じるのが新音さん、枯れ葉をまき散らすちょっと変な子供を、
彼女は素に近い感覚で演じる、そしてそれがピタリとはまる。

11歳の二人がスクリーンに映し出されているだけで僕は心が癒され愉しかった。
小学生のたわいないエピソードが積み重なって、エンディングに進んでいく。
大人たちが極力そんな子供たちに立ち入らないようにしている、好感が持てた。
主人公の父親のゴシップは、だから蛇足だった。
子どもたちが作り出すファンタジーに、大人が巻き込まれるぐらいでちょうどいい。

登場シーンは少なかったものの、
もう一人の母娘コンビは「物語の一からの再生」を紡ぎ出す重要な役割を担っていた。
思いっきりまき散らす桜の花が美しい、
それは宇宙人でもある日本人の贅沢だった。

桜は再生を信じているからこそ、美しく散ることを僕は信じたい。
本作の子供たちのように。
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