母なる証明 (2009) 

文字数 637文字

【誰にでもある恐怖】 2010/7/19



韓国シネマはどうも苦手だと公言している。
実際に年に一度ビデオを見るぐらいの不勉強さである。
韓国シネマ作家のこともよく知らない、別に自慢しているわけではないが。

そんないきさつで ボン・ジュノ監督という名も記憶の扉の外っ側にあったようだ。
まことに申し訳ないと思ってフィルモグラフィーをチェックしたら、
《殺人の記憶》、《南極日誌》を観ていた。
評判のよろしい《グエムル》も撮っているとのこと、重ねて申し訳ないと思った。

本作でもボン・ジュノ監督の力量に僕は虜になる。
彼の真骨頂は観客の潜在意識にスーと滑り込む同期性にある。
今回の潜在意識は、ラストシーンに象徴される
【取り返しのつかない不幸は忘れるに如かず】。
正義や倫理や常識を超えたひ弱な人間の本性なのだろう。

日本語タイトルそのままだと母親の愛情がテーマのようにも思えるが、
ここはやっぱり人間に普遍的な欠陥を表現したからこその、
観る側の共感だったような気がする。
死んでも白状できない秘密、
墓まで持っていく記憶は人生を長く生きていくと苔の様に付着する。
そんなものは忘れてしまいたい。
だけど決して閑却できない、何かのきっかけで人はそれに囚われる。

知恵遅れの息子の潔白を信じた母親。
犯罪は不思議と弱者に纏わりつく。
被害者も加害者も弱者。
冤罪に甘んじる弱者もいる。
強き母は一人空回りしているのか?

記憶をなくしてしまうツボがあるなら鍼を入れてみたい。
笑って踊るしかない悲劇は、実はどこにでも転がっている。

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