マンチェスター・バイ・ザ・シー (2016)  

文字数 690文字

【彼らも 普通の人々 なのだろう】 2017/5/17



マサチューセッツの田舎町 マンチェスター・バイ・ザ・シーの風景が美しい、
美しい風景ではなく、普通の町の美しさに魅了された。
物語は故郷であるマンチェスター・バイ・ザ・シーから逃れた男(ケイシー・アフレック)の
忌まわしい過去、
生き続ける悲しみを描く。

人格者の兄が急死し、残された甥の後見人に遺言指名された主人公が過ごす
故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーの町が
寂しく、もの悲しくそして美しい。
死の影から逃れることのできない主人公、
ただ主人公にだけ心を開く甥っこのために主人公が苦悩し結論を出す、
それだけの物語だった。

僕はレッドフォード監督の「普通の人々(1980年)」を思い出す。
ひとつの悲劇で家族は今まで築き上げてきた信頼、絆をあっさりと失くしてしまう、
それも怒りの勢いのままに。

本シネマでも、
どこにでもあるような家族の悲劇、そこから立ち直れない男、
離婚した元妻、
家出した兄嫁、
秋波を送る甥のガールフレンドの母親、
献身的な友人夫婦、
過去の事件を忌み嫌う昔の友人たち・・・。
彼らもまた 普通の人々なのだ。

主人公の消しがたい過去の悲劇はシネマの中で明かされる、
しかし彼は決して救済されることもない、
人生はそんなものかもしれない。
マンチェスター・バイ・ザ・シーでの過去、現在が主人公の胸の内で交錯する、
耐えられない過去から逃避したまま現在をも顧みない。

そんな主人公に、それでもほんの小さな灯りがともった、
普通の人々にも希望を持つことはできるのだ。

普通の物語、普通の男を切なく優しく伝えてくれたケイシー・アフレック、
主演男優賞に文句なし。

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