ペイルライダー (1985)

文字数 878文字

【決別の賛歌】 2007/7/15



クリント自身お気に入りの《アウトロー/1976年》とアカデミー受賞作の《許されざる者/1992年》を繋ぐこのシネマから彼のウェスタンに対する想い、試み、そして決意が感じられる

主人公は流れ者の牧師、少女の祈りに応えふっと現れ、金鉱利権争いの中、弱きを助け悪を懲らしめて立ち去っていく。ラストシーン、少女が主人公を呼び戻す声が、むなしく響き山びことして返ってくる・・
これを単純に名作「シェーン」へのオマージュと決め付けていいものか?
クリントが正統派ウェスタンの歴史を捨て去ることは出来ないが、ウェスタンは新しい血を必要としていた。
ここにクリントの「決別」と「創造」の意志を色濃く観た。

本シネマを観ていて途切れることなく感じた執拗な違和感は、なんと、シネマの舞台「西部の町」そのものだった。
この西部の町は(セットだからというわけではなく)恐ろしく現実感の希薄な空間だった。
なるほど、この町にしか雪が積もらなかったり、牧師が瞬間移動するのは、ここがある種の進化の時空にある踊り場のような機能を持っているからだったのか?
一方の流れ者の牧師も、間違えようもなくニセ牧師なのに、弱き側に祝福を授け弱きなりの結束を強めていく。
そして、この二つの要素、「牧師」と「異次元空間」が融合すると、暴力を伴った解決がもたらされ、そして平穏が訪れる。
牧師は、この空間(町)でしか武装しないし人も殺さない。
思い切って想定すれば、この空間はマカロニウェスタンの世界だ。
そうすると、金を探す人々のコンミューンは、その反対の古き良き「シェーン」の世界になるのだろうか。
悪を倒したシェーンばりの早撃ちの弾痕は、悪の体にきれいなサークルを描いた。
その傷跡が、同じ傷跡が牧師の背中にもあった・・・。
彼が倒したのは過去の自分の亡霊だったのだろうか。

ラストシーン、町を出て、少女の声に応えることなく青白き愛馬にまたがり、延々と遥かなる山に向かうクリント。
彼の目指した場所を僕は想像できる。そして何かに決別しとことも。
さすが、ウェスタンへの想いが格別なクリントならでは。
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