茜色に焼かれる (2021) 

文字数 751文字

【今のところ尾野真千子さん代表作】2021/5/25



尾野真千子さんには石井裕也監督が似合っている、河瀨直美監督ではなくって。
アジアンフォトジェニックとしてヨーロッパには好まれるお顔立ちなのだろうが、尾野さんの表現力は肉体から発するプリミティブな高みに至っているのに、今まで誰もそこにフォーカスしてくれず、せいぜい個性的な相手役とか敵役でその片鱗を小出しにしてたに過ぎないと思っていた。
今シネマは、どこからも文句の出ない主演、
今作では個性的でパワフルでそれでいて、どこにもつかみどころのない神秘性すら漂わせている・・・代表作と喧伝されているが、この分だと次回作も代表作になるに違いない。
石井監督の才能がオープニングから炸裂する。
元高級官僚のブレーキ踏み間違いによる事故であっさりと殺されてしまう主人公(尾野さん)の旦那(オダジョー)の死に様にまずショックを受ける(そういえば現実のよく似た事件も理不尽の極みだった)。
そこから7年後、舞台はリアルタイムの令和時代、新型コロナパンデミックとこれほどまでに密着したシネマにもショック、出演者がマスクをする。
それでは、俳優のアイデンティティである「お顔」が見えないのだが、それなりにマスク解除されることになっている、もちろん文句をつけるつもりはない。
かように、コロナ禍の現代を敢えて描いて見せるのも、その底辺に生きる人間の崇高さを今一度思い出させるためだったのか。
足掻けば足掻くほど暗い深みに落ちていく主人公、そんな底辺にいる者たちをナメテ利用する人間たち、マスク姿の群衆が恐ろしく見えてくる。

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」、「町田くんの世界」を継承したような、切ないけれどちょっとだけ生きる力を貰ったような気持ちになった。
今のところ尾野真千子さんの代表作。
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