二重生活 (2015)

文字数 595文字

【揺れるカメラに揺れる心】 2016/6/28



通常よりも2段階くらい暗く、がさついた映像は本シネマの感触そのままだった。
実存を証明するという哲学的命題のための「尾行」をテーマに掲げただけに、カメラも上下左右に揺れる、主人公の心そのものだった
そんなこんなで、疲れるシネマだった。

物語は三組の男女の不完全さを暴きだす。
大切な人は必ず自分から去っていくことに悲観し、人間の実存に悩む主人公大学院生とその恋人。
満たされた家族環境にも豊かな経済状況にも満足できない不倫エリートサラリーマンとその妻。
実存主義を教える孤独な哲学科教授とそのパートナー。

「尾行」することで他人と自分を置き換えて実存を考察してみては・・・とアドヴァイスする教授。
アドヴァイスを疑うことなく実行する大学院生。
大学院生が尾行したエリート社員に降りかかる ありきたりのトラブル。

完璧な幸福、満ち足りた生き方は存在しないと嘆く 満ち足りた人間。
博士論文を完成させるという口実で「尾行」そのものに魅了される大学院生。
救いがたき孤独に苛まれる教授の淡い恋心。

ご指摘のとおり、パーフェクトな幸せなどないし、生きる目的を確信している人たちがたくさんいるとも思えない。。
毎日を精一杯楽しく生きる、そんな小さな生きがいしか僕は思い付かない。

結局、3組の男女もそんな場所にちゃんと納まっていた。
揺れる心には現実と欲望の、二重生活が行き来していた。
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