ウインド・リバー (2017) 

文字数 680文字

【テイラー・シェリダン 三部作の重み】  2018/7/31



監督・脚本のシェリダンのメッセージがある:
(1)「ボーダー・ライン(2015年)」が闇の世界、
(2)「最後の追跡(2016年)」が富の格差、
そして本シネマ「ウインド・リバー(2017年)」がカタルシスを描いているという。

はたして「カタルシス」が何を意味するのか?
本シネマが提起しているのは先住民族(インディアン)の少女の失踪問題、
その問題が顕在化すらしていないこと。
主人公はワイオミング州のハンター、インディアンの血を引く娘を失い
その痛みと向き合って生きている。
今また主人公の友人の先住民の娘が失踪後死体で見つかる。

物語はインディアン居留地の凍り付く白世界、
そこには将来を放棄したインディアンの末裔がひっそりと暮らす。
そんな閉塞に覆いかぶさるような少女たちの死。
アメリカ合衆国成り立ちの根っこに触れる告発なのだろう、
インディアンはとっくの昔に忘れ去られてしまった。

アメリカの繁栄から隔絶されたワイオミング ウインド・リバー、
そんな世界に癒しを求める元兵士、
追い詰められ流れ着いた男たち、
フロリダ生まれのFBI女性捜査官、
犯罪捜査をはなからあきらめている居留地保安官、
そして、捜査ではなく復讐のために協力する主人公ハンター。

美しいワイオミングの山々にアメリカ開拓の原点が見えてきた。
しかし、こんな形の国家になることをインディアンたちは望んでいたはずもない。

「ハート・ロッカー」で見せたアメリカの狂気、
今シネマではアメリカの魂を僕に投げかけたジェレミー・レナー、
カタルシスとは「アメリカへの愛」だった。

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