人類資金 (2013)

文字数 1,273文字

【「これから正義と善のシネマを観せます」】 



小説とシネマの連動で話題を提供してくれる「人類資金プロジェクト」に一口乗ってみる。
封切り3日前に発刊された小説第4部を読み終えないままシネマに突撃した。

ちょっとここで僕の作家「福井晴敏」にかかわる個人的興味背景も述べておこうか。
「亡国のイージス」、「終戦のローレライ」は映像化され世に広く知られたが、防衛庁(今は省)情報局応援小説、「川の深さは」から「op.ローズダスト」に至る作品群がお気に入りだ。
乱暴に、かつ勝手に総括すれば、福井作品は「日本を守るものはだれか?」その前提として「日本の安全、繁栄とは何か?」を教えてくれる。
ジャンルとしては、僕のお好みの「近未来破滅SF」なのかな。  
閑話休題:
そして今回のテーマは「M資金」、タイトルは「人類資金」。  
そして前述の通り、シネマと小説が同時進行するという興味多いイベントとなった。
なるほど作者と監督の意気込み通り活字と映像は別々にその特徴をマックスに生かしていたようだ。
原作ベースの展開でない映像化、映像のノヴェライゼーションでない精緻なプロットが幾分ヘビーな小説を二通り味わうことができた。
シネマでは小説第4部までが冒頭30分で終了してしまう。
残りの2時間はあれよあれよのカタルシスへ突入する展開に引き込まれる。
小説はあと3部発刊される予定らしいが、この様子からすると結末すら異なってくるのかもしれない・・・。
シネマ2時間分を小説でフォローせざるを得ないようだ、なかなかうまい商売方法である。

シネマの話をしよう。
タイトルにもある「人類」にとって善なる行動は何ですか?あなたは正義を実行していますか?
…と、説教されること、されること、全編を通じてである。
哲学的に言えば「富の配分の不公平」への告発と、解決への行動を説教される。
平たく言えば、資本の原理によるマネーゲームでは人類は幸せになれないことに気づいてね・・・と説教される。
これが難しい。
今まさに日本人個人が願っているのは「賃金アップ」、「デフレ脱却」、「バブルよもう一度」。あまつさえ、お金があれば「幸福」になって「元気」すら手に入れることができるという経済政策。
この環境下に生きる日本人に、頭を挙げて世界的視野を持つことを本シネマは説教してくれる。

「人類資金」は象徴的かつ具体的だ。
日本復興のためのアングラマネーと言われた伝説の「M資金」、大震災復興に使用されないとすればやはり、ただの都市伝説だったのか?
「M資金」はアメリカ企業の単なる投資窓口でしかなかったのか?
日本が復興を遂げて久しいとすれば「M資金」はその対象を世界に、格差是正に切り替えるべきではないか? 「M資金」「人類資金」などなくても善はなされなければいけない。
善を為す、正義を行うこと、これが人類資金だろう。

こんな説教臭いシネマ、じつは嫌いじゃない。

老婆心:
森山未来さんの役作りにいたく感動した。
海外ロケが功を奏していた。
仲代達也御大が元気だった。
ヴィンセント・ギャロが相変わらずだった。
こんな見所を見損なわないように。
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