バンク・ジョブ (2008)

文字数 740文字

【女王陛下の007 ?】 2009/5/3



意味深なタイトル「バンクジョブ」、
現在の世界不況を起因した金融界を代表するバンク、
そのバンクの果たす役割への痛烈な告発を感じたものだ。

とはいえ、当シネマの舞台は40年近くさかのぼる。
当事バンクジョブはまだまだデジタル化から遠く、アナログ主体のジョブが大勢だった。
その代表として「貸金庫」、
その貸金庫の中身を巡る多様な確執が本シネマのテーマだ。
キーワードは「裏世界のパンドラの箱化した貸金庫」。

この金庫の中身が強奪されても正直に被害を申告できるまともな使用者が少ない。
つまり犯罪に関わる金、宝石、書類、写真が貸し金庫に眠っていた。
知ってか知らずか、英国諜報部門が王室スキャンダルもみ消しに動き貸金庫強盗を画策する。
今であればマーガレット王女の不倫など世間にはインパクトのないネタだろうが、
40年前だと大きく違っていた。
この作戦を素人に無理強いしたことから生じるあまたのトラブルがシネマの構成になっている。

この作戦に巻き込まれ絡んでくる黒人扇動家、ポルノ王、汚職警官、政府高官。
極め付きは、パンドラの箱を開いたアマチュア銀行強盗グループに降りかかる厄災。

ベストとはいえないまでも良くできたストーリーだが、これが事実とのこと。
なるほど「事実は小説より奇なり」とまではいかないが、強盗団の泥臭さはリアルだった。
最後は国家権力が結局型をつけるところもリアルだった。

英国では、階層社会の閉塞感を一掃する快挙を英雄視する傾向がある。
主人公の優雅なエピローグは、まさにその図式だったのだろうが、
残念ながら僕にはそのカタルシスに実感が持てなかった。

シネマファンとすれば、
なぜ「007」に下命しなかったのかと歯がゆかった。
女王陛下の007ではなかったのかい?
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