リコリス・ピザ    (2021) 

文字数 810文字

【70年代はもはや古き良き時代に】 2022/7/13



全くの怠慢ではあった。
予断なしシネマ鑑賞を自負してはいたが、監督チェックもしなかった本シネマだった。
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)」同様ポール・トーマス・アンダーソンによる監督・脚本・製作だとは気づくことなく無邪気にスクリーンに向かった。
主演の二人にも見覚えはなく15歳少年が25歳女性に無理恋愛を敢行する一風変わった70年代懐かし物語りなのかな?と思った。
シネマ進行に伴って、その70年代の風物、ファッション、モラルがだらだらと陳列されていく。
主人公たちが立ち寄る世界も、テレビ・映画界から始まって政治まで幅広く統一感もない、その時折の流行りイベントに触れていくだけだった。
1973年のオイルショックシークエンスでは我が実体験が一気に蘇ってきたものの、アメリカと日本に共通するトピックスというだけだった。

しかし、途中からこのマイナー臭芬々のシネマに大物俳優が登場してくる。
ショーン・ペーン(ハリウッドスター役)、ブラッドリー・クーパー(B・ストライサンドの愛人役)のゲスト出演ならではのハチャメチャに目が覚めた。

・・・このシネマ、ただものではない・・・
年の離れた主人公二人が紆余曲折の末に愛を確かめ合う、という超定番を恥ずかしげもなく展開する背景に、70年代のLAの空気を濃密に漂わせる、まだまだアメリカの古き良き時代が残っていたかというように。
多様性の誇示も、人種分断も、富の格差も、そこに一切嗅ぎ取ることはできない。
自由と平等が当たり前のように、そこに横たわっていた。

少年を演じたのはフリップ・シーモア・ホフマンの息子のクーパー・ホフマン、
年上女性を演じたのはアラナ・ハイム(ロックバンド・ハイム)、
二人ともに俳優デビュー作になった。

そしてタイトルロールでようやく監督に気づいた、
過去作品の重厚さは何処にも見られないポップな語り口も悪くはなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み