告白 (2010)

文字数 974文字

【HTSD(本屋大賞原作症候群)】 2010/6/10



良くも悪しくも「本屋大賞」原作症候群だった。

(1)興行(または観客)
   良くも: 本屋大賞ファン、ベストセラー追随ファンは
       大いなる潜在観客(顧客)層になっていた
   悪しくも:本屋大賞ファンは原作に感じた衝撃を忘れられないでいる、
        もしかしてもっと強烈な、シネマならではのカタルシスを
        味わえるかもしれないと過大な期待をしてしまった。
(2)構成(または脚色)
   良くも: 「告白」のタイトルどおり主要キャストが一人独白する設定は
        実にインパクトがあった、
        実際に原作の骨格を再構築する危険を冒す意味もなかった。
   悪しくも:原作が本屋大賞に輝いた第一の理由は、モノローグスタイル。
        しかし映像と連携し映像に支援されたとしても 
        シネマの流れが冗漫になる不自然さを隠すことはできなかった。
(3)映像
   良くも: 「猟奇行為」vs「復讐」を背景とした血と涙をハイスピード撮影で再現し、
        痛みと哀しみを低速化した。 
   悪しくも:映像が挿絵イラストにしか見えないシーンに眼を伏せた。
        結局「言霊」が主役であるスタイルから抜け出すことができなかった、
        シネマの敗北だった。
(4)俳優
   良くも:  松多たか子さんは望むべく最適のキャスティングだった。
        地獄の不幸をすり抜けると、人は神のごとく冷淡になれる。
   悪しくも:悪魔中学生のようでいて実は典型マザコンキャラクターを演じるのは
        稀有の才が必須だった。
        演じる魅力と現実作業のギャップが悲しかった。
        困難に違いない、文字と映像の「隔たり」は埋められなかった。

・・・とここまで「良くも」と「悪しくも」を対比させてきたが、
総合印象は、せっかくの本屋大賞不発のように思えたのだろうか?
いやそんなことはなかった。
僕は原作真っ向勝負の意気込みに感じるモノが大きかった。

本屋大賞シネマを振り返ってみても、
「博士の愛した数式」、「夜のピクニック」、「東京タワー」、
「ゴールデンスランバー」と遜色ない。

これからも「本屋大賞シネマ」を心待ちにしていきたい。

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