白頭山大噴火 (2019)

文字数 899文字

【白眉メタファーがどっさり】 (2021/9/10)



アイロニカルに言えば、「日本沈没」と「アルマゲドン」の精神を積極的に進取した韓国シネマらしい息つく暇を与えないポリティカルミステリーになっていた、
日本沈没のテーマである民族消滅は、しかしながら最後には腰砕けになってしまう辺りもエンターテイメント指向と言えばそれなりの言い訳にもなるか?
一方で、アルマゲドンのテーマである父娘のお涙頂戴は、あっさりと ハ・ジョウンに持っていかれてしまったイ・ビョンホンがお気の毒だった。

というように、シネマ展開はどちらかというとコミカル要素が支配的だ、それもこれも物語の救いがたい現実を斜めから見ているから。
主人公の爆弾処理隊大尉(ハ・ジョウン)は除隊になった日に特命を帯び・・・地震で壊滅した北朝鮮から核爆弾を解除するというサポート任務だ。
しかし、実行特殊部隊が全滅して爆破任務まで命じられることを始めとして、次々と不運な状況に追い込められる大尉は、ヒーロ―からは程遠い、
愛嬌者の大尉が逮捕して協力を強制する中国のスパイであり核爆弾の責任者である北朝鮮少佐(イ・ビョンホン)は油断のできない切れ者、この二人のデコボココンビが朝鮮半島沈没の危機を救うという構成がシリアスになるわけもない。

ところがどっこい、細部には強烈な皮肉がたくさん盛り込まれている。
徴兵制にうんざりしている韓国人、
火山噴火で一瞬にして消え去る北朝鮮の風景はあのバクダッドの崩壊に酷似している、
国民の支持率で動く韓国政府、特殊任務を妨げ最後は韓国軍を制圧する駐韓米軍、北朝鮮の利権を虎視眈々とうかがう中国、
韓国ドラマに没頭する北朝鮮人民、
・・・いやはやこれらは皮肉ではなく現実に違いないと思ってしまう、
シネマの有するパワーだった。
翻って、沈没するのは我が日本ではないかと思い返してしまった。
今現在多くの地震が発生しながら何の危惧すら感じない国民と対応政策を出せない政府、
他国からの侵攻の際、自衛隊は機能するのか、そして進駐米軍は?
それ以前にリーダーシップをとることができるのか日本政府は?
他国のシネマから日本を憂うることができたことは意義があった。
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