ローン・サバイバー (2013)

文字数 925文字

【シールズはPR上手】 2014/3/22



いま最強の兵士と評判のネイビー・シールズの実話に基づいたシネマだという。
アフガニスタンでシールズ最悪の作戦に参加してただ一人生き残った兵士の原作をベースにし、かつ本人が監修もしている。
この実話をベースに・・・というのが実は曲者ではある。
いや、決して非難しているわけではなく、
シネマはTVの再現ドラマにとどまっていいはずもなく、何かしらのカタルシスを観る者に与えてほしいと願っている。

その意味から評価すれば、シールズ隊員の比類稀な戦闘能力と戦闘心をあっぱれに見せつけてくれる。
一騎当千の諺のとおり、4人で200人のタリバン兵に立ち向かうシーンは、遥か昔のアラモ砦を思い起こさせ、否応でもアメリカ愛国心を鼓舞するのだろう。
救援に駆けつけたヘリが撃墜され本隊が全滅してしまうというシールズ史上最大の被害もこの愛国心を余計に煽ることになる。
しかし、
この後の展開から急にリアリティを失っていく。
タリバン派ではないアフガニスタン人部落にかくまわれて生き延びる唯一の生存兵士。
追われる者を守るのは「民族の掟」だという説明も説得力が乏しい。
彼をかくまう反タリバンの人々が人品骨柄卑しくないキャストで、タリバンの憎々しげなそれとの大きな違いもわざとらしい。
とっておきとして、可愛らしい男の子がアメリカ兵を慕う設定になっているのはどうしたことか、これはデュークの「グリーンべレ―」の焼き直しなのか。
正直なところ、僕は興ざめしていた。

ところがエンディングタイトルとして、この4人の実在の人物のスティル、ムービーが映し出されるに至って、今度は僕は混乱してしまった。
このシネマは偏ってはいるがプライベートフィルム、シールズの鎮魂シネマなのだと悟った。
そういえば、近年観たシールズ隊員本人が演じるシールズシネマを思い出した、
シールズはPR上手である。
もしかして今、アメリカは一握りのヒーローに頼らなければ戦争に勝てないということなのだろうか。
その一方で、軍事民間委託やロボット化が進められ、経済性優先で戦争の正義はどんどん影を潜めてきている。
いったい「テロとの戦い」とは何なのだろう。
その意味から本シネマは意義深い作品であるともいえる。
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