フランドル (2005)

文字数 584文字

【戦争と愛・・・人類の営み】 2008/1/19



地上すれすれの視線から眺めた戦争と男女の愛、
どちらもややこしいものだが、予想外に身に迫る感動を覚えた秀作だった。

フランダース地方の片田舎からイラク戦争に志願する若者たち。
農地に捧げる若い心身がどこかで空回りし摩擦熱が燃え上がりそうに熱い。
彼らと過ごす女たちも、恋人と同様に壊れかけそうな精神をもてあましている。

戦地で経験する悲惨は、過去数千年人類がすでに進化の過程から施してきた残虐に他ならない。
戦争という名の下のおろかなる行為を本作では愚直に描き尽くしてくれる。
そこには十字軍遠征以来の、気の遠くなるような宗教戦争の名残すら嗅ぎ取れる。
いやいや、兵士たちにそんな高邁な理想はない、もしかして思想面の大義すらない。
戦って死んでいくのは、底辺に生きる若者たちに限られる。

シネマはワイド気味の視角を多用し、
カットは暗転でつなぎ、
音楽は一切排除されている。
俳優たちの無名性と相まって、ドキュメンタリーを観る錯覚に陥りそうになる。
戦争における名も無き兵士、名も無き敵とはこのようなものだろうと共感する。

この静かなる、しかし強烈な戦争批判と対になるのが若者の愛。
奔放なる愛、真摯な愛、本能の愛。
「愛してる」という言葉の重みを感じるラストシーン、そこにドラマなどなにも無かった。
このナチュラルの重さを感じて、ひとりまた身を震わせた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み