トロピック・サンダー/史上最低の作戦 (2008) 

文字数 917文字

【コメディ、パロディを超え はるか至高へ】 2009/5/4



俳優が俳優の役で、シネマ製作の裏側を描く本作、
そこにベンとジャックがつるんだらコメディ作品としか
特定できないのは自然だとは思うが、
ところがどっこい、
ふたつの要素で想像し得なかった感動をいただくことになった。

ひとつはクセモノ、ロバート・ダウニー・Jrがベンとジャックに作用して
シリアスな演技競争になったこと。

登場人物はすべては映画製作関連、主に俳優という設定であるから
シネマ界楽屋落ちの謗りは否めないものの、
それでも「笑いの仮面」の下にしたたかな人間模様が見えた。
人は多かれ少なかれ何かを演じて人生を構成していくものだ。
その矛盾との折り合いこそ生きることなのかもしれない。
ベン・スティラーの底知れない実力を目の当たりにして、
コメディの印象はすっかり消えてしまう。
実際、コメディというエッセンスは、
パロディ(オマージュとは微妙な違いを感じる)の機微に昇華されている。
特に複数の戦争アクション大作シーンを彷彿させるカットも忍び込まされているが、
いく分ディープファン向けかもしれない。
劇中飛び交う会話の中でも、過去の名作を論評する有意義なシーンがあったりで、
単純コメディの範囲を超えていた。
それらすべての洗練された印象は、やはり主役俳優3人の競演からもたらされる。

ふたつ目は監督としてのベンのこだわりだ。
特に、ロバート・ダウニー・Jrをはじめ
トム・クルーズ、マシュー・マコノヒー、ニック・ノルティの
実力俳優を重要ポイントにキャスティングしたことだろう。

彼らにはコメディ作に友情出演した大物俳優にありがちな、
ふざけた手抜きを一切許していない。
それぞれのエキセントリックな役作りは致し方ないが、
それぞれに本作の基盤でもあるハリウッドシネマ現状を痛烈に批判している。
ここでも、ディープなシネマファンには一層うれしいボーナスになるのだが、
彼らのハッスルぶりを単なるオチャラケとみて、却って白ける観客もいることだろう。
コメディ界をリードするベンの面目躍如であることには違いないのだけれど。

さて、僕はというと
戦争シネマコレクターとして満足し、
マシューにまであえて喜び、
トムのダンスにぶっとんだ。

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