テン (1979)

文字数 781文字

【42歳の抵抗】 1980/2/14



ブレーク・エドワーズ監督の快作。
クルーゾー警部シリーズに比べると毒気がやや薄いが、おしゃれ度合いが高いハイ・セン・スコメディ。
主役のダッドリー・ムーアが良い。
《ファウル・プレイ》では、ゴールディ・ホーンを食っていたほどの可笑しさは健在、圧巻だった。あの時、彼の主役でコメディを観てみたい・・・と思ったのが実現したもので、僕の想い入れも大きい。
今回、彼も一枚看板だからそれなりに自重しながらも、大人の哀愁を漂わせたコミカル演技に徹していた。なかなかの出来だ、もしかしてジャック・レモンの域になれるかも・・・がんばれ。

ご都合のいいストーリーだが、コメディだから当然全く気にならない。
歌手サム(ジュリー)を恋人に持つ42歳の作曲家ジョージ(ムーア)が10点満点(テン)の美女ジェニファー(ボー・デレク)に恋焦がれ追いかける・・・が本筋。

実際は、常にサムとの中年カップル愛が基盤になっていて、コメディとしてはこのふたりのギャグにおおいに笑わされる。
古典的な電話のギャグ、望遠鏡ギャグもピンクがかって愉快だ。
一方のタイトルにもなっている理想の女性「10」を追跡する小男のジョージ、超グラマーのジェニファーとの見た目アンバランスな笑いから、懐かしくも何の変哲もない「熱砂に裸足」ギャグにいたるまで、今では珍しいほどオールド・ファッションな構成だ。
ところが「10」が、SEXに関しては極めて開放的なハリウッドタイプと知るや、とたんに興味をなくしてしまう保守派ジョージ。
ありきたりだし、せっかくここまできて残念だし、コメディとしての勢いをなくしてしまった。

なによりも観客に対する一種の裏切りだが、憑き物を落とさなければ、インテリ派のサムの元に戻って、めでたしめでたしとはならない。

中年男の麻疹と言われる「抵抗物語」に付き合わされた思いがした。

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