リンカーン (2012)

文字数 855文字

【今そこにある危機、「リーダーとは」】 2013/4/23



スピルバーグ監督の明確なメッセージ、確と受け取らせていただきました。
アメリカで民主党、共和党の政党政治が陥っている
「今そこにある危機」に警告を発していたのでした。

そして、そこには強かなアイロニーも裏打ちされていました。
シネマが取り上げたのはまさに「黒人の権利」を謳う「奴隷解放宣言」憲法修正法案です。
シネマの中では、経済的資産としてしか認められなかった「黒人」が
21世紀の今、アメリカ大統領として2期目の地位にいます。
世界は一方では多くの懸案を抱えたままグローバルサイズでの
「自由」、「平等」、「平和」実現に苦悩しているのも事実です。
歴史的転換期となった史上初の黒人大統領オバマを戴くアメリカ、
しかし政治は大統領一人で動かせるものではないのです。
ましてや、世界のリーダーとしてのアメリカに課せられた人類発展の責任たるや、
暗雲立ち込める将来において今こそ強烈に求められるものになっています。

そこで「リンカーン」なのです。
一言で言えば「リンカーン」のリーダーシップがシネマ全編で、
これでもか・・まだまだ・・というぐらいに語られています。
独学で博識、説得力のあるコミュニケーション力、清濁併せ持つ行動力、
スケールを超えた理想追求の熱意。
リンカーン最後の4ヶ月を描いた本シネマの焦点は議員多数派工作です。

急進的奴隷解放主義者スティーブンスを説得するリンカーン、
汚れ仕事担当のロビイストたちに敢えて票獲得を直接指示するリンカーン、
南軍との和平交渉、すなわち内戦終結の糸口さえ憲法修正法案可決の道具として
操るリンカーン、
そして党派を超えた、目先の利益を超えた「人類の正義」を実現させたリンカーン。

いまリーダーとして求められる資質をスピルバーグ監督は、
リンカーンという実在の大統領に求めていました。
グラント将軍をして「あなたは1年で10年分年をとったように見える」と言わしめ、
リンカーン暗殺で物語を終わらせる。

今のリーダーにその覚悟はあるのか?
と問いかけていました。

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