探偵はBARにいる3 (2017)

文字数 1,126文字

【せっかくの微風に乗れずに《失速》】 2017/12/1



前作の感想文でこんなことを想いました:
『老婆心(次回作に向けて):
すでに触れましたが、無理やりのアクションシーンは不要です、
この探偵コンビはもっともっと強くてもいいと思います。
札幌を背景にしたシネマ史に残るような「壮絶なアクション」こそ映像でしか表現できないもの、大いに期待しています。
ただし、あまりにコメディラインを歩まないようにお気をつけください、
本シリーズは日本では稀なハードボイルド探偵ストーリーなのですから。』

その杞憂が現実となりました。
無理やりのアクションはさらに劣化しました、特殊撮影のスローモーションは、
例えれば「シャーロック・ホームズ・シリーズ」にはとてもとても及びません。
時間稼ぎのためとしか思えない締まりないアクション展開にがっかりしました。
日本では稀なハードボイルド原作の趣がとうとう途絶え、
これほどまでにステレオタイプの探偵物語に変換できるのかと絶望しました。

その理由は定かではありませんが、今作は原作から離れたオリジナルストーリーだそうです、
スタッフ・キャストがアイデアを出したというエピソードも漏れ聞きました。
原作「名無し探偵」のアナーキーでいながらストイックでエキセントリックな生き様が
今作ではすべて消し去られました。

シリーズ当初から大泉さんのキャスティングは危ういところがありましたが、
それでも大泉さんの持つ不思議な現実感が微風ではありながら追い風となって、
本シリーズを上昇させてきました。
今作の「名無探偵 俺」は過去2作の焼き直しでありどこにも新鮮な魅力がありません。
それをいうならば、シリーズお決まりのシーン、例えば桐原組のリンチシーンや
喫茶店の峰子のバカさ加減も惰性で終わっていました。

決定的だったのは、脚本に統一感がなかったことでしょう。
過去2作の中からアイデアをひねり出したいたように思えて仕方がなく、
継ぎ接ぎ感の不快感すら覚えました。
繰り返しになりますがその不快感は
アクションパートでもコミカルパートでも軋み出ていました。

札幌の町起こしというミッションもこうなると曲者でした。
前2作では「札幌の明と暗」をバランスよく
お洒落に伝えようとする意気込みが感じられました。
今作でも市長さんやファイターズ監督さんをそのままキャスティングしてその
意思を示そうとしていました。
しかしながら、それはもはや「ご当地シネマ」に自らを縮小させるだけだったようです。

見落としたのかと懸念しています、
それは原作者のカメオ出演、東さんの札幌愛が今作では消えそうな状況でした。

こうなれば、榊原健三も探偵畝原も混ぜたオールキャストで、
もう一度「札幌探偵物語」を語ってほしいものです。

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