21ブリッジ (2019)

文字数 919文字

【ブリッジならぬブリット】



タイトルに含まれている 「ブリッジ (橋)」、
シネマでは数々の名作に使われてきている。
「戦場にかける橋(1957)」、「ラインの仮橋(1960)」、「マディソン郡の橋(1995)」、「ブリッジ・オブ・スパイ(2015)」、
TVドラマでも ずばり「ブリッジ(2011)」という名シリーズがあった。

主演したのが、ブラックパンサーのチャドウィック・ボーズマン、
昨年(2020年)2016年以来の癌との戦いの末に亡くなってしまった。
本シネマが闘病のさなかで撮影されたと知るに至って喪失感のなかにも
名作の予感に包まれて僕はスクリーンに対峙した。

「21ブリッジ」とはニューヨーク、マンハッタン島にある橋の数、別にネタバレではない。
8名もの警官殺しの犯人を追い詰めるために、主人公の刑事が打ち出した捜査手配としての21ブリッジ封鎖というだけに過ぎない。
 
モンタージュとして何度もマンハッタンのブリッジズが俯瞰からまたクローズアップで映し出されるが、ストーリー展開にさほど関係してはいない。
すでに、オフィシャル作品紹介のなかで「背後に隠された謎・・・云々」
などと喋ってしまっている通り、
本作のテーマはブリッジとは別なところにある。

捜査過程で発砲射殺したことで内部監査されるシーンがある、「なぜ刑事になった?」と聞かれて、「DNAだ」と答える主人公。
警官だった父の姿を追い続ける主人公が本シネマの見どころになっている、その父親は犯人に殺され、主人公の理想の姿になっている。
本作の主人公刑事は、評判の殺し屋刑事ではなく真実を捜査する原理主義刑事だった。

ふと、僕はサンフランシスコ市警ブリット警部補を思い出していた、「ブリット」の主人公を演じていたスティーブ・マックィーンのことを。
ストイックな捜査に忍び寄る得体のしれない悪、情に決して溺れないデカ魂、最後に悪に打ち勝つ、そして静寂に戻る。

なかなか、いまどき珍しいポエティックなポリスシネマだった、
もちろん時代は大きく変わっている、
ブリットもびっくりの銃撃、アクション、カーチェイス。

大好きなシエナ・ミラーが枯れた風情を切なく見せてくれる、これも満足だった。
ポリスシネマの秀作だった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み