SF/ボディ・スナッチャー (1978)

文字数 636文字

【恐怖の共鳴】 1980/8/25



破滅SFの一種、僕の好きなジャンルだ。
監督のフィリップ・カウフマンは本作のあと《ワンダラーズ》を撮った売れっ子の一人だそうだが、緊迫感溢れた画面である。
宇宙からの侵略を簡潔に紹介していくあたり、オーソドックスではあるがテンポ良く、観客の心に不安、気懸かりをまめに配布していく。心憎い展開である。
エイリアンの浸入がまだ明白でない時点で使われる「角度が異常な映像」は、新鮮で強烈だ。
決してグロテスクな絵が使用されるわけではなく、精神の襞の中にひっそりと忍び込んでくる未知の物。

人類の本能的恐怖こそ本シネマのテーマである。
グロテスクではないといっても、人間の複製シーンは気味が悪い。
まさに、人間の模造品を作りそこにエイリアンが宿るアイデアは秀逸である。
生物の宿命である「死」ではなく、不気味なのっとりで自己が消滅することは何よりも耐え難い恐怖だ。
結局、人類の敗北を示唆するストップモーションで終わるラストシーンは、「キャリー」、「ファンタズム」同様、必殺ショットだ。
いや、本シネマのほうが視聴覚打撃にくわえて、情緒的にも打ちのめされる。

最後まで抵抗し続ける主人公(ドナルド・サザーランド)も、とうとう負けてしまった挫折感、彼しか頼れなかったナンシー(ベロニカ・カートライト)への迫り来る恐怖の共鳴が、ショッキングエンディングをいやがうえにも盛り上げた。
このような破滅SFが有する特異性は決してスペースオペラSFや宗教的SFに劣るものではない。

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