紙の月 (2014)

文字数 506文字

【ありがち】 2014/11/16



神の教えにも反発する女学生の燃える魂が、
真面目な銀行員となった中年期にめらめらと燃え上がる。
神は言う・・・受け取るより与え給え。
というようなキリストの教えとはまるで関係ない、
よくある詐欺使い込み破綻物語になっている。

劇中でもキーワードになっていた《ありがちなこと》を絵にかいたようなシネマだった。
ところが困ってしまうのは、
あまりにもありがちな主人公を宮沢りえさんが熱演してしまっているからだ。
倹約な主婦が贅沢なひと時を若い男と過ごすために銀行の金をちょろまかす。
歯止めをなくしたように、犯罪に突き進む。
悪事の露見にしぶとく抵抗する。

40歳前後の女性らしいメーク・ヘアーで奮闘する宮沢りえ、そこには女優の華がない。
まさに、女優稼業のターニングポイントにありがちなシネマになってしまった。
その凡庸を唯一破るのがラストシークエンス;
安定した、しかし、退屈な人生から逃げるかのような疾走、
アジアの街でふと姿を現すその佇まい。
あぁ、この妖艶な宮沢りえを観るために、
僕はず~と「ありがちな」映像を見なければいけなかったのか?

この一瞬のために制作したとすら邪推したくなる贅沢、いやまた傲岸か。

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