バーニング・オーシャン (2016)

文字数 821文字

【生真面目なパニックシネマ】 2017/4/21



近頃大掛かりなパニックシネマを観る機会が少なくなった。
「タワーリングインフェルノ」、「エアポート75」、
「ポセイドンアドベンチャー」などなど、
絶体絶命のピンチから生還する主人公が眩しかったものだ。

本シネマのタイトルは、まさに往年のパニック作品らしい・・・
「燃える海洋 バーニング・オーシャン」ときたもんだ。
しかしながら、本作は実際に起きたアメリカ最悪の海洋石油事故を再現したものだった。
2010年のメキシコ湾原油流出事件といえば記憶に新しい、
その石油掘削施設「DEEPWATER HORIZON」がオリジナルタイトルになっている。

シネマは11名もの尊い人命が失われ、数百億ドルの被害になった事件を
《その日》の始まりから丁寧に再現していく。
主人公のチーフエンジニア(マーク・ウォールバーグ 素朴な熱演)の視線で、
巨大コングロマリットBP社の利益優先主義を糾弾していく。
主人公と現場責任主任(カート・ラッセル 渋い味)が如何に立ち向かおうと
BP社幹部(ジョン・マルコビッチ 得意の嫌味満載)の利益主義にかなわないところは、
日本での大事故の際に感じる無力感を共感する。

「見たくない結果が出ると困るから、完全な安全確認作業をスキップするのか?」
という非難も虚しい ・・・
そして想定外という言い訳。

かように、大企業の責任を追及するシネマではあるが、
肝心のパニックの原因を理解するには
専門的知識が必要かもしれない、生真面目なところだ。
高層ビルから避難する、旅客機を無事着陸させる、船底に到達する
・・・という単純なカタルシスは用意されていない。
破れかぶれのサバイバルしかなかった。

仲間を救出した勇敢な主人公のPTSDの恐怖、
エンドロールでの犠牲者の実物写真と名前、
その後のBP社訴訟の結末、
今に至って何も解決されていないこと,個人の無力を表していた。

企業の傲慢と人間の悲しさ、生真面目なパニックシネマだった。

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