世界から猫が消えたなら (2016)

文字数 480文字

【不格好でも、悩みながらでも生きていきます】 2016/5/15



思いがけない緩慢な映像の流れに戸惑った出だしだったが、
そこに身を任せると気持ちがよかった。
そんな映像を支えるピアノの旋律も心地よかった。
本シネマの本当の姿は実は苦しみと絶望、
そのテーマも心地よいものとは遠く離れたものなのに不思議だった。

ひとは ともすれば忘れてしまう「自分の死」、
忘れてしまう以前に真正面から考えることさえ厭うものだ。
人は永遠には生きられない・・・のに。

本シネマに観る若い主人公の生への執着は、だから当たり前すぎる感情なのだろう。
老人でさえ乏しくなった生に執着するのだから。

事前情報なしで観たお陰で、
僕は若い主人公と同じように生に拘り、彼と一緒に悲しみに暮れる。
そして彼と一緒に、かけがえのないものを見つけ、生きてきたことに感謝する。
もし、明日僕が世界から消えても、
生きてきたことを喜んでくれる人がいたことに僕も気づく。

だからこそ、不格好でも悩みながらでも、生きていけそうな気になってきた。

佐藤健の好演、脇を固めた奥田、原田のベテランの味わい
…映画を世界から消えさせてはならない。

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