人生の特等席 (2012)

文字数 1,221文字

【パーフェクト プログラムシネマ】 2012/11/24



先ずもって、邦題 《人生の特等席》に文句を申し上げたい。
明らかに興行主は「クリントの年齢、82歳」を宣伝素材にしている。
言外に・・・(これはクリントの最終作品になるかも、さあどうぞ観てね)ってな感じだろうか。
それがどうした?といわれればそのとおり。
シネマの世界では何でもあり、魑魅魍魎が跋扈する魔界なのかもしれない。

しかし、
本シネマの真骨頂は観客には「満足」を、WBには「収益」をお約束してくれる
MAKE YOUR DAYの一言にある。
言葉を変えれば、マルパソカンパニーオーナー社長であるクリントがWBから任された
プログラムシネマともいえる。
プログラムシネマならではの手抜きはクリントの常道でもある。
気心の知れたロレンツに監督業を任せ、
中小企業オーナーの特権でもある「おいしい」役をつまみ食いしているように感じられた。
そんなときは、上昇中の若手俳優が、その隙間を確実に埋めてくれることになっている。

今作では、ジャスティン・ティンバーレイクがその重責を担い、
見事そのミッションを遂行していた。
いまさらのエイミー・アダムスではあるが、
彼女が幅広い演技を内包していることが確認できる。

だからといって、つまらない「世代交代シネマ」などではない。
原題の「カーブが打てない」はストレートしか打てないルーキーを
ストレートに揶揄した言葉だが、
この老齢のスカウトマン自身がまるでカーブに弱いのには笑ってしまう、
もっともここでいうカーブは人生の生き方における「処世術」のようなものだが。

実はこの「カーブ」の裏には主人公の暗い過去が隠されている。
娘に誤解されながらも娘と距離を置いてきた人生の秘密が
トッピングのように本シネマの味わいを深めている。

老スカウトマンの引退を策するIT系いまどきスカウト派との戦い、
ドラフト会議における各チームの策謀と裏切り、
弁護士事務所パートナー昇格争いの中の娘、
障害のある老スカウトをアシストする娘、
父親以上にスカウティングの才能がある娘
カーブの打てない強打者ルーキーと裏腹に、
MLBデータベースにアップされていない隠れた才能、
そしてハッピーエンディング。

クリントはたかがプログラムシネマの中でも、
★IT優先のビジネスを批判し
★男性社会の愚かしさを明らかにし
★男の友情、信頼を謳い
★マイノリティーの活躍を鼓舞し
★観客をハッピーにしてくれる

さぁ次は重厚な暗いテーマのシネマを期待しまっせ。

老婆心;
クリントの演じた老スカウトの年齢が気になるところだけど、
別に実年齢(82歳)でもおかしくないことを、蛇足として追加しておく。
シネマの中、亡き妻の墓前での一人芝居で明らかになっているが、
妻26歳のときに娘が生まれ、その娘が今33歳とすれば、主人公49歳のときの娘、
年の差23歳婚だったことになる。
ドントウォリー、現実はもっとすばらしい、
クリントは66歳のときに結婚し子供ももうけている。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み