真実 (2019)

文字数 712文字

【紛れなき 是枝フィルム】 2019/10/14



ドヌーヴ、ビノシェ、ホークのお三方が
「是枝フィルム」に馳せ参じたということを聞かないから、
是枝監督が彼ら三大スターを手元において夢の海外製作を愉しんだ、
というところだろう。

例によって 監督・脚本・編集を手掛けるワンマンスタイル、
物語りは、尊大で偉大なる女優とその娘の家族内輪の確執を全編で繰り広げる。
今作でも、過去の「家族のちょっと怖いお話」シリーズを引きずっていて、
よその家族の醜さを覗き込む後ろめたいけど興味尽きないテーマになっている、
その家族がカトリーヌ・ドヌーブ演じる女優に振り回される設定となるとなおさらである。

僕がかってに名前を付けた「家族のちょっと怖いお話シリーズ」には、
「誰も知らない」の衝撃から 「歩いても歩いても」、「そして父になる」、
「海よりもまだ深く」と続き、「万引き家族」でそのベールを脱ぎ棄てた感があったが、
本作ではまた以前の不可解な怖さが戻ってきた。

ドヌーブが演じるのは、演技のことしか考えられない女優、
ビノシェが演じるのは、家族の生き方すら台本にしてしまう脚本家、
母娘が反発し、拒絶し、嫌悪し、愛し、許す・・・
これらはいったい演技なのか? 台本通りなのか?

ハッピーエンディングの裏側にまとわりつく澱のような憎悪、
まぎれもなく是枝フィルムがそこにあった。

ところで、
純日本的心の機微を求めた脚本にはたして俳優がついてこれたのか?
日本的家族とヨーロッパ風個人主義の融合または対比は映像に表現できたのか?
難しいミッションに挑戦した是枝フィルムだった。

老婆心:
相変らず子供の扱いが上手だ、子供たちの演技を観ているとシネマの嘘くささが目立つ、
困ったものだ。
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