アシャンティ (1978)

文字数 574文字

【ロレンスを求めて】1979/3/26




「アラビアのロレンス」をイメージしたパロディだ、それも上質なので僕の満足度は高い。
しかしながら、本シネマの舞台は砂丘もあるがジャングル、湖、河、大峡谷など自然美を誇るアフリカ、ロレンスの心のふるさとアラビアではない。

それでも、黒装束の涼しい目の戦士が出現するに及んで僕はロレンスの世界に躊躇なく身を委ねた。駱駝に鼻であしらわれる主人公、陽炎に揺らめく遠景からターバンを幻視し、奴隷を見捨てる似非ヒューマニズム・・・何のことはない、本シネマがロレンスを求めて決してそこを超えることができなかったことを責めるのが正しいのか、壮大なロマンチック活劇をロレンスの枠に嵌め込もうとする観客としての自分自身の傲慢を恥ずべきなのか?

本シネマは、実はシンプルな装いだった。
愛する者のため無邪気に砂漠に挑戦する男たちには、異民族とのカルチャーショックもロレンスが経験したような挫折・苦悩もなかった。
もっと言えば、ロレンスが「砂漠は清潔だ」と言わしめた砂漠の神聖さは物語り終盤で消え去る。追跡劇は砂漠ではなく水の上で決着する、まるで安直なジェームス・ボンドスタイルにすり替わるかのように。
水中に逃れたアシャンティの女が汚らわしそうに濡れた服を脱ぎ捨てるとき、
砂漠の追跡劇の皮肉なカタルシスに呆然となる。
(記:1979年3月26日)



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