戦火の馬 (2011) 

文字数 641文字

【「ジョーイ」は宇宙が遣わした大いなる知性】 2012/3/4



美しいシネマだった、格調の高さにも敬服した。
その意味でスピルバーグの良心が滲み出た、スピルバーグ原点シネマだった。

「予断」は禁物である。
馬好きではない、
戦争アクションは観るに耐えない、
動物が戦争に加担させられるのは許しがたい
・・・などと軽軽しく予断しないほうがいい。

確かに今指摘したマイナスポイントは本品でも避けて通ることはできない。
しかし、作品は一貫して反戦の思いやりに満ちている。
一頭のサラブレッド「ジョーイ」が軍馬として戦争のエピソードに翻弄される中で、
この軍馬に啓発されたように人間が美しくも己の正義に生きる。

「ジョーイ」を巡る人間たち、生命たち:
飼い主で調教をするナラコット一家の人たち、
彼に生死を託す英国騎兵大尉、
彼を駆って脱走するドイツ少年兵兄弟、
彼を最愛の友とする孤独な病弱な少女、
彼を消耗品と考えることにした虚無心情のドイツ軍指揮官、
彼をソンムの戦場から解き放とうと英独両側の塹壕から進み出た兵士、
戦後競売のかけられる彼をナラコットに落札させようとカンパする大勢の兵士たち、
落札した彼を、手放してしまう病弱少女の祖父、

これほど多数の人間が「ジョーイ」と接することで喜びや、哀しみを感じ、
「人間らしさ」に気づいていく。

「ジョーイ」は宇宙が遣わした大いなる知性の仮の姿に思えて仕方なかった。
スピルバーグはこのファンタジーで人間の愚かさとともに崇高さを描いた。
決して、人間の可能性を諦めてはいけない・・・と。

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