すべての美しい馬 (2000) 

文字数 896文字

【ドキドキ ワクワク !?】 2010/7/11



遅ればせながらコーマック・マッカーシーワールドに嵌っている。
遅れているので目いっぱい追いつこうとしている。
これは小説の話である。

気がつくとシネマ化作品も気になりだした。
「THE ROAD」、「NO COUNTRY」は
見事にマッカーシーの世界が映像に息づいていた。
《すべての美しき馬》もその一環で拝見した。
原作は難解饒舌マーッカーシーワールドとしてはわかりやすい方の部類だろう。
わかりやすく、暴力、権力、友情、愛、孤独、そして壊れゆく自然が描かれる。
一言に無理やりまとめるとすれば、その魅力は【ワクワク、ドキドキ】。

文体が細やかな情景描写に徹していて、それはまるで脚本の細部書き加えの如しだ。
これをして、映像化しやすいのか、それとも映像化の妨げになるのか?
暴力描写のスピード感、一体感をシネマに再現するのは困難だと心配だった。
愛情描写の切なさは役者次第だと期待していた。
メキシコの「荒涼と豊潤」相反する自然はある程度想像することができた。

シネマの話をしよう;
【ドキドキ、ワクワク】が少し、ほんの少しづつ欠けていた。
ドキドキワクワクのキーワードは少年であり、少女だ。
純粋な彼らが文明に背を向けて自然に学びひたむきに生き、
大人たちの世界に吸収されることを拒否する。
それは人生のイニシエーションとなる。
ほんとに残念なことに
今作のキャストにはそのイニシエーション以前の初々しさに欠けていた。

暴力表現、愛情表現ともに極力抑制されていた。
おそらくは、まだ古きよきハリウッドの自己規制があったのかもしれない。
この結果、少年の傷が心身ともにどれほど深かったか?
理解する指針を失ってしまった。

美しいだけのメキシコの平原、山脈は少年たちを育んではくれない。
過酷な本当の自然がちょっぴり欠けていた。

原作とシネマの隔たりを審判するつもりは無い。
シネマで原作のエッセンスを復元できたり、
いや原作以上の感銘を映像に見ることがあるときもあり、
はたまた どうしても何かが欠けてしまう場合もあるということだ。

すべてが贅沢な繰言でもあるが 
ちょっとずつすべてが足りない想いが残った。
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