土を喰らう十二ヵ月 (2022)

文字数 646文字

【土まで盗んだジュリー】 2022/11/14


原作(水上勉 1978)は不勉強で全く知らなかったが、山の中で自給自活生活する作家の物語を原型としている。
シネマでも一年間の旬の食材(主に山菜)を中心に、その料理経過と 完成形がビジュアルで確認できる仕組みになっている。 主演のジュリーが実際に料理をしたかのように見える、その一点だけでも 製作スタッフのご苦労は報われるに違いない。
タイトルの通り季節折々の自然と料理がマッチングするのではあるが、これが十二か月続くわけだから、山の食材または料理に興味がないと息苦しくなるかもしれない。
料理は趣味だけど採り立て食材など手に入らない我が身としては、羨望のまなざしでスクリーンを凝視するだけだった。

しかしご安心あれ、しっかりとメインイベントが用意されている。 藁ぶきの古い家奥の中でゆったり流れる料理の時間が急変する、お通夜のもてなし料理をアドリブで変幻自在に操る主人公がいた。

しかしテーマは料理ではない、早くに亡くなった主人公の妻とその義母の遺骨が並ぶ部屋、「死」は誰にも平等に訪れることを悟る主人公。
実年齢74歳のジュリーが素のままの姿で死を迎える自分勝手な男を熱演していた。
自分勝手と言えば、「太陽を盗んだ男(1979)」で世間常識を相手に自分勝手な若者を熱演したジュリー、年を重ねって再び自分勝手な往生を目論むジュリー、今度は「土」を盗んでいた。

少なくとも一年間の撮影拘束が必須だった本シネマ、ジュリーの一番新しい代表作となった。
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